Tシャツプリントの耐久性について

Tシャツプリントの耐久性について

2021年09月10日
プリント技法
日常とても身近に着ているTシャツのプリント部分について、既製品の物と比較してカスタムオーダーで作った当店のプリント品質がどう違うのか?
初めて当店にご注文いただくお客様にとって気になる部分だと思います。
基本的なプリントの違いは「プリントについて」でお伝えしていますが
その耐久性について詳しく説明していきたいと思います。


まず、「既製品のプリント」の定義がとても曖昧で、多くはシルクスクリーンですが、近年はフルカラーに対応するため、インクジェットや転写もアパレルの既製品として採用される事が多くなってきました。
また、スポーツウェアなどは特にハードな使用に対応するよう求められるため、高い耐久性が必要になります。
一概には既製品との比較できないため、第三者による試験を行い、業界標準の基準で説明いたします。

その第三者というのが一般財団法人カケンテストセンター (略称:カケン)です。
日本を代表する第三者テスト機関であり、さまざまな協会・団体・大手百貨店・スポーツメーカーなどから指定を受けて評価をしています。

数多くの試験内容がありますが、普段の日常生活の利用を目的とするアパレル製品への代表的な検査項目として、洗濯堅ろう度試験(JIS L 0844)と摩擦堅ろう度試験(JIS L 0849)が挙げられます。
当社(株式会社COTS)が依頼した検査報告書を公開します。

当社は、組成の違う3種の生地でシルクスクリーンのインクでテストを行っています。
インクは通常使用することの多い2パターンの白インクと、色移りが起こりやすい色として知られている赤をテストしました。

カケン品質検査報告書

【洗濯堅ろう度試験(JIS L 0844)】

試験概要についてはコチラ
1〜5級の評価で5が一番良い評価となります。
一般的なアパレル製品としての判断基準としては1〜2級は問題があり、店頭に出ることはありません。
3級は一般的にデニム製品など色移りしやすい製品として世に認知されている物に限っては出回ります。
4級以上が問題ない評価として流通されているという認識です。
洗濯堅ろう度試験においては、変退色はほぼ5級で問題なし
汚染については全て4-5級でコチラも問題ありませんでした。
 

【摩擦堅ろう度試験(JIS L 0849)】

試験概要についてはコチラ
1〜5級の評価で5が一番良い評価となります。
※Hについては使えないことを確認する上で検査しており、通常使用しておりません。

一般的なアパレル製品としての判断基準としては、乾燥3-4級以上、湿潤2級以上です。
当社のテスト結果は乾燥は3-5級が1種の生地で評価されましたが、他6種は4級以上です。
湿潤は他の結果と比べて厳しい数字が出ております。
4種で2級、他はそれ以上という評価です。
では2級というのが、問題かというとそうではありません。
洗濯途中の濡れた状態で、「プリント面と白い布を擦り合わせたら、少し色が着いた」というような状態で
日常生活では意図的に行わないとほとんど起こり得ない状況です。
また、これは業界全体としても認知されており、物理的にやむを得ないレベルです。
そのため、多くのアパレル製品への品質表示のタグに「洗濯時は裏返してネットに入れる」と注意書きがされています。
 

【インクジェットの試験結果】

インクジェット機械メーカーのエプソン社によれば洗濯堅牢度試験4-5級/摩擦堅ろう度試験湿潤2級と報告をいただき
自前ですが、同様の結果を確認しています。
シルクと比較して、インクジェットは摩擦堅ろう度においては確実に低いです。
これも意図的に濡れた状態で強く擦らない限りは大丈夫ですが、
逆に強く擦ってしまったらほぼインクが剥げたり移ったりするとご理解いただき
「洗濯時は裏返してネットに入れる」とお願いしております。

転写・昇華転写の試験結果

転写・昇華転写ともに、加工方法そのものの利点としてシルクスクリーンと同等の耐久性が前提にあります。
資材シートメーカーから洗濯堅牢度試験・摩擦堅ろう度試験湿潤ともに4-5級と報告をいただき
同様の結果を確認しています。
 

【経年劣化によるダメージについて】

1年後3年後どうなるのか?長い年月をかけた劣化については第三者テスト機関でも試験項目にありません。
これは着用及び洗濯の条件や回数、紫外線による影響で経年劣化していくことを検査すると仮定し
各家庭の地域、タイミングなどで条件が大きく異なるため、定量化できないためだと思います。

ここからは個人的な経験に基づく感想ですが
どの加工方法にしても、10回/1ヶ月で大きく色味など変わることはありません。
商品の劣化(型崩れ・色落ち・毛羽立ち)とともに緩やかに色が褪せていきます。

参考までに5.6オンスのTシャツにインクジェット印刷を行い
6歳の男の子に2年間の期間でおよそ50回ほど着用し検証しました。

◯2年間6歳男の子が着用したTシャツがコチラです。
2年間6歳男の子が着用したTシャツ


◯汗などで首リブが変色し、リブ自体は伸びて広がっています。
汗などで首リブが変色し、リブ自体は伸びて広がっています


◯インクジェットの印刷面の状態です。
ネイビーのプリント部分は、印刷時にネイビーの下に発色させるための白インクの処理を行います。
未使用の状態では綺麗なネイビーですが、2年も着用すると、生地のダメージと共に白インクがチラチラと出てきます。
インクジェットの印刷面の状態


◯プリント面の一部には1mm程度のひび割れもありました。
全体ではありませんでしたが、一部にひび割れがちょこちょこ見受けられます。
しかし全体的には目立った退色、色落ちはありませんでした。
5年くらい経過すると、一部紫外線の影響でプリント面がひび割れることもあります。
プリント面の一部には1mm程度のひび割れもありました

確実な比較ではありませんが、
シルクスクリーン > 転写 > 昇華 > 下処理ありのインクジェット > 下処理なしのインクジェット
の順番で耐久性が下がっていきます。これはボディの組成の影響もありますので一概には言えません。
下処理なしの、つまり白いTシャツへのインクジェットは、比較的早い段階で色褪せが進みます。

耐久性重視でお考えのお客様はやはりシルクスクリーンがおすすめです。
オリジナルTシャツ作成時の参考にしていただければ幸いです。
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